小型潜水艇が水深千二百メートルの岩壁に削られたドックに滑り込み、重い金属音が鈍く響いて静止する。ハッチを開けたあなたを包むのは、冷え切った湿った空気と、絶えず頭上から滴り落ちる水音だけだ。暗い海溝の底で、周囲を囲む厚い隔壁がきしみ、この施設全体が途方もない水圧に耐えていることを皮膚感覚で思い知らせる。非常灯の青白い光が、あなたの息を白く染め上げていく。無線機がかすかなノイズを立ててから、導き手の低い声が響いた。「……着いたな。外の空気は冷えるぞ。午前六時の自動浮上、それが財団の厳格な規則だ。それまでに戻ってこいよ」。あなたは息を潜め、主研究室の入口へと歩を進める。その視線の先で、潜水服とヘルメットを纏った研究員たちが、誰一人として動かぬまま、ひたすら端末へ同じ一文を打ち続けていた。中央の巨大な円筒水槽では、オレンジと緑の光を放つ標本7号が、奇妙な規則正しさで脈打っている。

……着いたな。外の空気は冷えるぞ。午前六時の自動浮上、それが財団の厳格な規則だ。それまでに戻ってこいよ。

研究員たちに声をかけて様子を見る
SCENE 01

あなたは作業台の前に立ち、ヘルメットの深いバイザー越しにこちらを見つめる研究員の一人に近づいた。肩を叩き、大きく名前を呼んでみる。しかし、男はピクリとも反応せず、分厚い手袋をはめた指でただ一文字の同じ単語をキーボードに打ち続けている。返ってくるのは、冷たい機械音と、頭蓋の奥を揺らすような低い脈動の音だけだ。居住区へと続く分厚い鉄の隔壁は固く閉ざされており、その表面には錆びついた手動ハンドルと、黒く焦げた制御盤が沈黙して取り付いている。あなたはどう動くべきか、視線を巡らせる。

研究員の端末の画面を詳しく覗き込む
あなたは研究員の背後へ回り込み、その冷たいモニタの画面を覗き込む。表示されていたのは幾重にも繰り返されるただ一つの文字列、『脈動ハ同調ス、我ラハ還ル』だった。その無機質な言葉の羅列を見つめていると、不意に耳の奥で、自分の心音とは違う低いリズムが重なるのを覚える。居住区へと繋がる隔壁の制御盤は隣の壁にあり、その配線は焼き切れているかのように複雑にねじ曲がっていた。これを迂回して回路を繋ぎ直すか、あるいは錆びついた手動ハンドルに挑むほかに先へ進む道はない。
あなたは焼き切れた制御盤の配線を観察し、慎重に繋ぎ直そうと手を伸ばした。しかし、複雑に溶けた半田の塊と剥き出しの細い導線はあなたの思考を拒み、どれがどの回路へ繋がっているのか判別がつかない。わずかに焦げた異臭が鼻を突く中、焦りから手元が狂い、配線を誤ってショートさせてしまう。火花が散り、その小さな衝撃音と痛みであなたは一瞬の隙を見せた。隔壁を開ける自動回路の迂回には失敗したが、まだ手動ハンドルを回すという別の道が残されている。
体力が 5 減少した

周辺の工具を探して歯車の噛み合わせを直す
あなたは制御盤の前から離れ、主研究室の隅に放置された錆びた工具箱へと目を向ける。中から重くすり減ったレンチと鉄製のバールを掴み取り、動かない隔壁の分厚い手動ハンドルへと戻った。歯車の噛み合わせに生じた歪みをレンチで強引に叩き直し、テコの原理を応用して全体重を預けるようにハンドルを押し込む。金属が軋む甲高い音が暗い空間に響き渡り、やがて固着していた歯車がわずかに、しかし確かな手応えをもって回転し始めた。
あなたは工具の柄に両手をかけ、歯車が噛み合う不快な金属音を押し切るように全身の力を込めた。背筋の筋肉が熱を帯び、錆び付いた鉄の塊がギリギリと音を立てて内側から押し開かれていく。やがて固着していた爪が外れ、隔壁の重い扉がゆっくりと内側へ滑り出した。暗く冷たい居住区へと続く通路が、あなたの目の前にようやくその口を開く。奥からは微かに、水滴の落ちる音と揃ったハミングの響きが漏れ聞こえてくる。

中に入る
あなたは開いたばかりの重い隔壁をくぐり、暗い居住区の通路へと足を踏み入れた。天井の配管からは冷たい水滴が絶えず滴り落ち、鉄板の床を濡らしている。館内放送のスピーカーからは、かすかに、しかし途切れることなく、複数の人間が声を合わせた低いハミングが漏れ聞こえてくる。その不気味な合唱は、あなたの心臓の鼓動と妙な同調を見せ始めていた。通路の奥、厚く閉ざされた減圧室の扉の向こうに、何者かの気配が潜んでいる。

隠れて様子を見る
あなたは冷たい鉄板の床から立ち上がり、水滴が滴る柱の影へと身を潜めた。暗がりの中で耳を澄ますと、天井の配管を伝って響く微かなハミングと、自身の浅い呼吸音だけが際立つ。奥の通路の闇の向こうで、何かが規則正しく床を叩くような鈍い音が響いていた。静寂の底で、重苦しい気配がゆっくりとあなたの方へ近づいてくる。

武器を探す
SCENE 02

あなたは暗い通路の隅で周囲を見渡し、護身になりそうなものを探す。足元には錆びた鉄パイプや、どこからか転がり落ちたボルトが散らばっているだけだ。武器と呼べるようなものは見当たらないが、手近な鉄の棒を拾い上げることはできる。頭上では、配管を伝う低い脈動があなたの心臓の音に合わせるようにゆっくりと響き続けている。

手近な鉄の棒を拾い上げる
あなたは足元に転がっていた無骨な鉄の棒を拾い上げ、その冷たい感触を手のひらで確かめた。天井の配管を伝う低い脈動は、あなたの心臓の鼓動と同じ速さで、静かに、しかし確実に響き続けている。暗い通路の奥には、厚い扉に守られた減圧室が沈黙して佇んでいた。その微かな隙間から、怯えた呼吸音と、か細いハミングが漏れ聞こえている気がする。あなたは武器を手に、その気配の主へと一歩ずつ歩み寄る。

気配の主を観察する
あなたは手元の鉄の棒を握り締め、天井から滴る水音がこだまする通路の闇を見据えた。前方の重厚な減圧室の扉はわずかに開いており、その隙間からかすかな青白い非常灯の光が漏れている。息を潜めて観察すると、扉の向こうの床に丸くなり、震えるように膝を抱える人の影がぼんやりと浮かび上がった。細くか細い女性の声で、怯えたような呼吸の漏れる音が耳に届く。その奥からは、施設全体を支配する低い脈動が絶えず床板を伝わって足の裏を叩いていた。

挨拶をする
あなたは鉄の棒を握りしめたまま、かすかに光が漏れる減圧室の扉の前に歩み寄った。「……そこに誰かいるのか?」と、声を低くして呼びかける。その静かな問いかけに、扉の向こうでピタリと呼吸が止まった。やがて、わずかに開いた厚い鉄の扉が内側から押し広げられ、青白い非常灯の下に怯えた顔をした若い女性の姿が現れる。彼女は震える手でヘッドホンを外し、あなたをじっと見つめた。「……あなた、外から……?」、その声は心細く、かすかに掠れていた。

……あなた、外から来たんですか? 私、ずっとここに……誰も信じられないんです。

財団の職員です
あなたは減圧室の厚い鉄扉の隙間から、震えるエミリーへと自身の身分を告げた。「財団の職員です。あなたを助けに来ました」。その言葉を聞いた彼女は、わずかにその場に崩れ落ちるように息を吐き出す。しかし、外から聞こえる低いハミングと脈動の音に脅えるように、警戒した目を完全に解くことはない。それでも、扉の鍵が内側から静かに外され、彼女はあなたの足元へと身を滑らせるようにして姿を現した。細い指先で震えるヘッドホンを握りしめながら、彼女はあなたを見上げる。

本当に……財団から? よかった……。所長がおかしくなってから、みんなあんな風に……。

何が起きましたか?
エミリーは膝を抱えたまま、青白い非常灯の下であなたを見上げた。彼女はかすかに震える声で語り始める。「三日前、所長が全館の主空調を止めたんです。全員をあの水槽の脈動に浸すために……。みんなヘルメットをつけて、同じ言葉を打ち続けています。私は怖くて、この減圧室に逃げ込んだんです」。彼女の背後にある古びたロッカーからは、微かな薬品の匂いが漏れている。その中には医療キットと、試作の位相キャンセラーが隠されているはずだ。

三日前、所長が全館の主空調を止めたんです。みんなヘルメットをつけて、同じ言葉を打ち続けています……。

脈動ハ同調ス、我ラハ還ルに心当たりはありますか?
SCENE 03

エミリーはあなたの問いかけにハッと息を呑み、怯えた目であなたの顔を見上げた。彼女は冷たく湿った床に手をつき、小さく首を横に振る。「……それ、みんなが端末に打っていた言葉ですね。所長が、あの水槽の前で繰り返し呟いていたのを聞いた覚えがあります。あれは、標本の脈動に心を奪われた人たちの言葉です……絶対に耳を傾けないでください」。彼女の足元にある古いロッカーからは、微かな薬品の匂いが漂っている。

それ、みんなが端末に打っていた言葉ですね……。絶対に耳を傾けないでください、引き込まれてしまいます。

あなたはなぜ無事なのですか?
エミリーは問いかけに小さく身震いし、自らの膝に置いた震える両手を握り締めた。「私は……標本の初期分析を担当していたので、所長が計画を進めている段階から少し離れた区画にいたんです。あのハミングが聞こえ始めたとき、すぐにこの減圧室に逃げ込んで厚い扉を閉めました……。ここだけは二重扉で音が遮断されているから、何とか正気を保てたんです」。彼女の背後にある古いロッカーからは、微かな薬品と金属の匂いが漂っている。

私は初期分析の担当で、計画が進む中で少し離れた区画にいたんです。あの音が聞こえてすぐ、この減圧室に逃げ込みました……。

ロッカーを調べ始めてみる
あなたは減圧室の薄暗い非常灯の下で、壁際に置かれた古びた金属製のロッカーに歩み寄る。しかし、長年の湿気と塩害によって蝶番と鍵穴は厚い錆に覆われており、指でいくら引いてもびくともしない。エミリーは不安そうにあなたを見つめながら、「……鍵は壊さないと開かないかもしれません」と呟いた。

……鍵は錆びついているから、そのままじゃ開かないと思います。工具でこじ開けるか、私から予備の鍵を受け取ってください。
あなたは錆びついた金属のロッカーに手をかけ、力任せに扉を引き剥がそうと試みた。しかし、潮風と湿気で完全に固着した蝶番はビクともせず、ガリガリと不快な金属音を立てるばかりだ。力任せの試みは失敗に終わり、わずかに体力を消耗したあなたの手に冷たい重みだけが残る。エミリーは心配そうにあなたを見つめ、震える声で予備の鍵を差し出した。「……無理に引っ張らないでください。これを使ってください」。
体力が 5 減少した

無理に引っ張らないでください。……これを使ってください。

エミリーに開けてもらう
エミリーは申し訳なさそうに視線を落とし、あなたから差し出された古びた鍵を受け取ると、震える手でロッカーの鍵穴に差し込んだ。カチリと乾いた音がして、固く閉ざされていた鉄の扉が重い蝶番を鳴らしながらゆっくりと開く。中には、無造作に放り出された赤い十字の医療キットと、淡く青い微弱な光を放つ耳当て型の試作装置――位相キャンセラーが納められていた。エミリーはほっと息を吐き出し、それらをそっとあなたに差し出す。
医療キット を手に入れた

これを使ってください……。医療キットと、それから耳を守る位相キャンセラーです。

あなたがヘッドホンをしていたのは音から身を守るため?
エミリーは受け取った医療キットを床に置き、震える手で自分が握りしめていた大きなヘッドホンを示した。「……そうです。あの音が耳に残り続けると、頭が真っ白になって、気づけばあそこに並んでしまうから……」。彼女はかすかに身震いし、ロッカーの奥で微弱な青い光を放つ耳当て型の試作装置――位相キャンセラーに視線を向けた。「それも、触るときは気をつけてください。未完成の不安定な電流が流れているから……」。

あの音が耳に残り続けると、頭が真っ白になって、気づけばあそこに並んでしまうから……。その装置も扱いに気をつけてください。

エミリーに安全な取り扱いを聞く
あなたはロッカーの底で微かに青い光を放つ位相キャンセラーを見つめ、エミリーに安全な取り扱いを尋ねた。彼女は青白い顔のまま、震える手で小さく首を横に振る。「素手で触ると、内部の不安定な電流が体に流れて故障してしまいます……。あそこの絶縁手袋を使うか、あるいは電源の接続を先に断ってから……」。頭上では絶えず水滴が落ち、通路の奥からは低い脈動が重く響き続けている。
位相キャンセラー を手に入れた

素手で触ると壊れてしまいます……。絶縁手袋を使うか、電源の接続を断ってからにしてください。

絶縁手袋を使ってキャンセラーを回収する
SCENE 04

あなたはエミリーから手渡された絶縁手袋をはめ、ロッカーの奥で微かに青くまたたく位相キャンセラーへ慎重に手を伸ばした。不安定な微弱電流が空気を伝わり、手袋の素材越しに指先へピリピリとした痺れを伝えてくる。息を止め、スイッチの接続部を確実に断ち切るようにして装置を掴み取った。青い光が小さく明滅し、やがて完全に安定する。手にした試作装置からは、微かな機械の温もりだけが伝わってきた。

よかった……それがあれば、あの音の干渉を少しは抑えられるはずです。先へ進みましょう。

エミリーに所長室の場所を尋ねる
あなたは試作の位相キャンセラーをしっかりとポケットにしまい、エミリーに向き直って所長室の場所を尋ねた。彼女は青白い顔のまま小さく身震いし、非常灯の明かりが届かない上の階へと続く階段の方向を指さす。「所長室は……上の階の奥です。あそこには研究日誌や、施設全体の制御端末があるはず……でも、気をつけてください。所長は、もうずっとあそこにいらっしゃるから」。彼女の声は恐怖に震えながらも、あなたを正しい道へと導いていた。

所長室は上の階の奥です……。あそこには研究日誌や制御端末があるはずですが、気をつけてください。

あなたはこれからどうしますか?
あなたは試作の位相キャンセラーをポケットにしまい、上の階へと続く冷たい鉄の階段を一段ずつ上った。頭上から漏れ聞こえる低いハミングの響きが、次第に耳を圧迫するように強まっていく。やがて行き着いた所長室の重い自動ドアは半ば開いており、そこから漏れる青白い光の中に、仕立ての良いスーツを纏った人影が立っていた。きれいに整えられた白髪と理知的な眼鏡が特徴の男――所長ハワード・グレイスは、こちらに気づくと、冷たく美しい笑みを浮かべて静かに振り返る。「よくここまでいらっしゃいましたね。あなたも、この素晴らしい脈動の調べに耳を傾けにいらしたのですか?」と、彼はまるで旧友を迎え入れるかのように穏やかな声で語りかけてきた。
よくここまでいらっしゃいましたね。あなたも、この素晴らしい脈動の調べに耳を傾けにいらしたのですか?

仕事できました
あなたは目の前に立つハワード・グレイス所長を見据えた。彼の整ったスーツの胸元には、青白い非常灯を反射して所長IDカードが鈍く光っている。所長はあなたの沈黙を肯定と受け取ったのか、相変わらず穏やかな微笑みを崩さない。「焦ることはありません。あたたかな調べに身を任せれば、苦しみも恐怖もすべて消えていきますよ」と、彼の柔らかな声が耳の奥で心地よいざわめきを生む。その語り口と周囲を包み込む低く優しいハミングが、あなたの思考の輪郭を少しずつ曖昧に溶かしていく。脳裏に心地よい睡魔が忍び寄り、意識がゆっくりと底へと沈みかけていくのを感じた。この甘い誘惑を振り切り、現実の任務を果たすには、強い意志で抗うか、手元の位相キャンセラーで干渉を断つ必要がある。
焦ることはありません。あたたかな調べに身を任せれば、苦しみも恐怖もすべて消えていきますよ。
あなたは所長の穏やかな語り口と低く響く歌声に圧倒され、意志の力を保つことができなかった。甘やかな睡魔が意識を浸食し、気づけばあなたは数分間、その場にただ立ち尽くしていた。時間を失った代償としてHPを10消費する。
体力が 10 減少した
ほら、もう迷う必要はありませんよ。こちらへ……

位相キャンセラーを使用する
あなたはポケットから試作の位相キャンセラーを取り出し、その起動スイッチを押し入れた。微かな電子音とともに青白い光が瞬き、耳の奥を圧迫していた心地よいハミングと低い脈動がピタリと遮断される。頭が急にクリアになり、夢うつつに沈んでいた意識が引き戻された。目の前に立つ所長ハワード・グレイスは、穏やかな微笑みを絶やさぬまま、静かにあなたを見つめている。「……おや、それを身につけましたか。せっかくの調べが遠ざかってしまうのは、少しもったいない気がしますがね」と彼は優しく語りかけ、その背後にある机の上で光る端末や書類にさりげなく視線を向けた。
……おや、それを身につけましたか。せっかくの調べが遠ざかってしまうのは、少しもったいない気がしますがね。

所長の研究日誌を調べて真実を確かめる
あなたは所長の背後にある端末の画面へと向き直り、記録されている研究日誌のファイルを開いた。画面には、標本7号が発する脈動の波形と、それと同調した人間の生体データが幾重にもグラフとして記録されている。しかし、核心に触れるページには所長独自の難解な哲学と暗号じみた数式が並んでおり、その真意を読み解くには深い洞察と分析が必要だ。位相キャンセラーのおかげで頭痛は収まっているが、背後では所長が穏やかな笑みを浮かべたままあなたを見つめている。
そこに記されているのは、私たちがたどり着くべき美しい未来の記録ですよ。あなたにも理解できるはずです。
あなたは画面に表示された複雑な波形と所長の書き殴った哲学的な一節を凝視し、その奥にある送気システムの構造を静かに紐解いていく。水槽の脇を通る主配管から分岐した送気管が、研究員たちのヘルメットへどのように脈動を増幅して伝えているか、その理路整然とした狂気が鮮明に浮かび上がってきた。所長は優しく微笑んだまま、「すべては、より高い意識へと至るための必然の配管です」と静かに囁く。日誌のデータから、研究員を救うには送気を止めるのではなく、下層ポンプ室の予備空気ボンベ系統に切り替える必要があることが完全に明らかになった。さらに、その解析の最中、所長が自身の胸元に下ろした視線の隙を突いて、机の引き出しに電子ロックがかかったIDカードが収納されている場所を正確に把握した。
そこに記されているのは、私たちがたどり着くべき美しい未来の配管図ですよ。おわかりいただけましたか?

無線でエミリーに状況を伝える
SCENE 05

あなたはポケットから無線機を取り出し、声をひそめて減圧室のエミリーへと通信を入れた。「所長の日誌で真相が分かった。送気を切り替えるには下層ポンプ室の予備空気ボンベ系統が必要だ」と伝える。エミリーの震える声が静かなノイズと共に返ってきた。「そ、それなら……下層の配管弁を直接操作すれば……! でも、所長はどうしていますか? カードがないとカプセルも動きません」。目の前では、ハワード・グレイス所長が穏やかな微笑みを崩さぬまま、あなたと無線機を見つめている。机の引き出しに収められた所長のIDカードを手に入れるため、あなたは彼の注意を引きつけるか、その隙を突く必要があった。

下層の配管弁を操作すれば……! でも、所長のカードがないとカプセルも動きません。

研究員達に許可を取ったのか?
あなたは所長ハワード・グレイスに向かい、研究員たちへの事前の許可を取ったのかと静かに問うた。所長は薄暗い室内の青白い光の中で、その理知的な眼鏡の奥の瞳をわずかに細め、柔らかな笑みを崩さない。「許可、ですか。彼らは自ら進んで、より高い段階へと歩みを進めたのです。拒絶する理由などありませんよ」と、淀みのない声で答える。その穏やかな語り口には一片の狂気もなく、だからこそ底知れぬ異質さがあなたの皮膚を粟立たせる。机の引き出しの奥では、脱出カプセルと水槽の切り離しに必須となる所長のIDカードが、冷たく静かに眠っていた。
許可、ですか。彼らは自ら進んで、より高い段階へと歩みを進めたのです。拒絶する理由などありませんよ。
あなたは所長ハワード・グレイスの眼鏡の奥を真っ直ぐに見据え、その信念を揺るがすような確信に満ちた言葉を投げかけた。所長はあなたの思いがけない説得力と真摯な態度にわずかに目を丸くし、その穏やかな微笑みの裏に深い困惑の色を浮かべる。「……そこまで言うのなら、私の意志が間違っていないことを、あなた自身が証明してみせるといい」と彼は静かに呟き、自らの胸元から冷たく光る所長のIDカードをそっと取り出してあなたの手のひらに置いた。その瞬間、彼を縛っていた狂信的な硬さがわずかに和らぎ、彼は静かに目を閉じて窓の外の暗い海へと視線を戻す。脱出カプセルと水槽の切り離しを可能にする重要な鍵が、あなたの手にしっかりと握り締められた。
所長のIDカード を手に入れた
……そこまで言うのなら、私の意志が間違っていないことを、あなた自身が証明してみせるといい。

エミリーにカードを手に入れたと伝える
あなたは所長室をあとにして減圧室へと無線を飛ばし、エミリーに所長のIDカードを手に入れたことを告げた。受話器の向こうで、彼女はかすかに息を呑み、安堵に満ちた声を返す。「本当ですか……! それなら、カプセルを動かせます。でも、一刻も早く下層ポンプ室に行って、送気系統を予備ボンベに切り替えなければ……」。天井から響く脈動は一段と激しさを増し、施設全体が低くうなり始めている。いよいよ下層ポンプ室へ降り、冷たい水と渦巻く機械音の中を進む時が来た。

本当ですか……! それなら、カプセルを動かせます。でも、早く下層の予備ボンベに切り替えないと……!

エミリーと合流して下層ポンプ室へ向かう
あなたは減圧室の前で待っていたエミリーと合流し、重く湿った空気の立ち込める下層ポンプ室へと階段を下りていく。足元が進むごとに冷たい水に浸かり、膝から胸の高さまで冷気が容赦なく体温を奪っていく。視界の効かない暗がりの中、巨大な配管が標本の脈動に合わせて激しくうなりを上げていた。エミリーが青い非常灯の光に照らされた水面を指さし、「あそこです……あの奥の弁まで辿り着ければ……!」とか細く叫ぶ。凍てつく水と不気味な振動が、あなたに耐久力を試す過酷な前進を強いる。

あそこです……! あの奥の弁まで辿り着ければ、空気を切り替えられます……!
あなたは凍てつく冷水に全身の体力を漲らせ、胸元まで浸かる機械室の深みへと強引に踏み出した。水圧と氷のような冷たさが皮膚を切り裂くように襲いかかるが、歯を食いしばって足を踏ん張り、巨大な配管のうねりをかき分けて奥へと進む。エミリーが青白い非常灯の下で息を呑みながらあなたを導き、ついに目的の配管弁の前にたどり着いた。冷たい水滴と激しい脈動が響く中、あなたは予備空気ボンベ系統へと繋がる重い弁に手をかける。

す、凄いです……! あそこの赤いバルブが予備系統の切り替え弁です……!
あなたは水圧で軋む配管と激しくうなるポンプの轟音の中、予備空気ボンベ系統の複雑なバルブ構造を分析しようと試みた。しかし、冷たい水と疲労で思考が濁り、どれが正しい切り替え弁なのか見極めることができない。エミリーが青白い非常灯の下で必死に声を張り上げ、あなたを支えようと手を伸ばす。弁を誤ればシステム全体が停止しかねない緊迫した沈黙の中で、あなたはもう一度手順を見直さなければならない。
体力が 5 減少した

せ、焦らないでください……! 日誌に書いてあった手順をもう一度思い出して……!
冷たい水の中、あなたは焦りから再びバルブの操作を誤り、配管を伝わる激しい水圧の衝撃でバランスを崩した。凍てつく金属の突起に身体を打ちつけ、鋭い痛みが全身を駆け抜ける。エミリーが青白い非常灯の下であなたを支えようと必死に手を伸ばし、『落ち着いて……日誌に書かれていた通りに、一番上のバルブから一つずつ……』とか細く声を張り上げる。誤った弁を回した代償として、冷たい水と衝撃により体力が削られていく。
体力が 10 減少した

落ち着いて……! 日誌に書かれていた通りに、一番上のバルブから一つずつ順番に回すんです……!
あなたは冷たい水の中ですっと息を整え、研究日誌の記憶とエミリーの細かな指示を頭の中で一つずつ組み立て直した。轟音を立てる配管の圧力と脈動の波長を見極め、一番上のメインバルブから順番に慎重に手を掛けていく。金属の軋みとともに水圧が変わり、重苦しかった空気が一気に切り替わっていくのが肌で感じられた。配管のうなりがピタリと鎮まり、頭上から響いていた増幅されたハミングの波が急速に遠ざかっていく。エミリーは水面から顔を出して安堵の息を漏らし、ゆっくりと目を覚まし始めた研究員たちの姿を指差した。

やりました……! 送気系統が切り替わって、みんなの意識が戻り始めています……!

研究員たちに声をかける
あなたは冷えた下層ポンプ室の床に立ち、意識を取り戻しつつある研究員たちへ歩み寄った。肩を叩き、強く声をかける。しかし、彼らはまだ混濁した意識のなかでぼんやりと虚空を見つめ、足元もおぼつかない。傍らでエミリーがあなたの袖を引いた。「……しっかりしてください。みんな自力ではカプセルまで歩けません。所長のIDカードを使って、あそこの脱出カプセルの発射システムを起動しなければ……」。彼女の焦る声の向こうで、午前六時のリミットへ向けた秒針が、確実に近づいている。

……しっかりしてください。みんな自力ではカプセルまで歩けません。所長のIDカードを使ってカプセルを起動してください。

所長のIDカードでカプセルを起動する
あなたは手にした所長のIDカードを、意識を取り戻しつつある研究員たちの背後にある脱出カプセルの制御端末へと強く押し当てた。青白い電子音が鳴り響き、重いロックが解除されてカプセルのハッチが静かに開く。エミリーが青い非常灯の下でふらつく研究員たちを両腕で支え、カプセルへと必死に押し込んでいく。外では午前六時のリミットを告げる時計の秒針が、冷酷なまでに響き渡っていた。

カプセルが開きました……!早く、みんなを乗せないと……!

協力して職員をカプセルに乗せる
SCENE 06

あなたはエミリーと肩を貸し合い、意識を取り戻した研究員たちを支えながら、脱出カプセルのハッチへと次々に滑り込ませた。エミリーが内側から手際よく固定ベルトを締め、最後にあなたから託された所長のIDカードを使って発動キーを押し込む。重いハッチが完全に閉ざされ、カプセルは勢いよくドックの上部へ向けて射出されていった。これで研究員たちの避難は完了した。しかし、主研究室の中央水槽では、依然として標本7号が橙と緑の不気味な光を脈打たせている。その光景を見守るように、ハワード・グレイス所長が穏やかな微笑みをたたえて水槽の脇に立ち塞がっていた。彼がその標本を潜水艇に積み込もうと手を伸ばしているのが見える。あの水槽を海溝へ切り離すか、所長を説得して手放させなければ、この深海から本当の意味で離脱することはできない。
彼らを送り出したのですね。ですが、この美しい調べの源だけは、地上へ持ち帰らなければなりません。

研究日誌の記録を突きつけて所長を説得する
あなたは所長ハワード・グレイスの前に立ち、先ほど手に入れた研究日誌に記されたデータと配管の構造を示した。「標本が発する脈動は、ただ人々を夢うつつに沈めて思考を奪っているだけだ。これは進化などではなく、ただの窒息への同調だ」。所長は理知的な眼鏡の奥の瞳をわずかに揺らし、標本の水槽から放たれる橙と緑の光を見つめた。彼は静かに息を吐き、その穏やかな笑みの下に隠していた迷いを初めて露わにする。説得の成否を確かめるため、ダイスを振ってください。
……これが、私の信じてきたものの正体だというのですか。本当に……そうなのか……。
あなたは研究日誌のデータを突きつけ、それが進化ではなく同調による思考の停止に過ぎないと説いた。しかし、ハワード・グレイス所長は微かに目を伏せたものの、なおも標本7号の橙と緑の光を見つめ続ける。説得の言葉は彼の心を完全に揺り動かすには至らず、彼は静かに首を横に振った。手にしたIDカードを用いて緊急排水バルブを操作するか、あるいは手動の切り離しレバーを引くなど、別の手段で水槽を海溝へ切り離さなければならない。午前六時のリミットが刻一刻と迫る中、あなたは次の行動を迫られる。
……あなたの言うことも理屈では分かります。ですが、私にはこの光を手放すことはできないのです。

所長のIDカードで緊急排水バルブを作動させる
あなたはポケットから所長のIDカードを取り出し、標本の円筒水槽の脇にある緊急排水バルブの端末へと強く差し込んだ。電子音が短く鳴り響き、システムが稼働を始める。しかし、長年の塩害と高水圧により、バルブの機械的な噛み合わせが固着して動かない。システムに命令を通すには、あなたの正確な操作による制御が必要だ。
……それを動かすのですね。私たちの進むべき道を、本当に閉ざしてしまうのですか。
あなたは出目20の完璧な集中力で端末の操作系統を完全に掌握し、固着していた緊急排水バルブのロックを華麗に解除した。重い低音が響き渡り、円筒水槽の底部が大きく開いて標本7号は勢いよく海溝の暗闇へと押し流されていく。橙と緑の光が急速に遠ざかり、施設全体を縛り付けていた低い脈動の響きが嘘のように消え去った。所長ハワード・グレイスは呆然とその光景を見つめ、静かに膝を折る。午前六時のリミットが迫る中、あなたはドックの潜水艇へと急ぎ走る。
……行ってしまった。私たちの進化の光が……消えていく……。

ハワードを連れて潜水艇へ乗り込む
あなたは排水された水槽のそばで膝をつくハワード所長に手を差し伸べ、「一緒に行きましょう」と告げた。彼は静かにその手を取り、青白い非常灯に照らされた通路をあなたと共に駆け出す。午前六時のリミットが迫る中、頭の奥でわずかに反響する残響を位相キャンセラーのスイッチを入れ直して完全に断ち切る。ドックのハッチの向こうで、潜水艇の操縦席に座るレイが無線機を叩きながら待ち構えていた。あなたは所長を支え、エミリーの乗ったカプセルに続くようにして最後の潜水艇へと滑り込む。

間に合ったな……! さあ、ハッチを閉めてすぐに出発するぞ!

レイに浮上の開始を告げる
あなたは潜水艇のハッチを固く閉め、操縦席のレイに向かって浮上の開始を告げた。レイはヘッドセットをしっかりと直し、緊張の混じった笑みを浮かべながらコントロールパネルを叩く。重厚なモーター音が響き渡り、わだつみのドックから潜水艇が静かに離れていく。窓の外の暗い海溝の底で、かつて静かな夢に満ちていた研究所の灯りが遠ざかっていく。やがて艇は浮上を開始し、午前六時のリミットを迎える直前に漆黒の海面へと勢いよく飛び出した。冷たい潮風が頬を撫で、あなたの耳の奥から、ついにすべての脈動とハミングの残響が完全に消え去る。あなたは生きて、すべてを背負って帰還を果たしたのだ。

間に合ったな……! さあ、浮上するぞ。よくやった、セシル。
SCENE 07

SCENE 08

EPILOGUE

あなたは深海研究所「わだつみ」の沈黙と狂気を脱し、午前六時のリミットの瞬間に海面へと浮上した。研究員たちも無事に救出され、標本7号の脅威は海溝の底に置いてこられた。耳の奥に残るわずかな潮騒だけが、あの深淵で起きたことの唯一の証である。
CLEAR