意識の浮上の手前で、鉄の冷たさが頬を伝っていた。耳の奥で、低い金属の軋みが断続的に響いている。目を開けると、天井の非常灯が不規則な間隔で赤く点滅し、あなたの影を壁に長く引き延ばしていた。人工重力が脈を打つように揺らぎ、床を蹴るたびに足元がフワリと浮き上がる。宇宙服の重みと、自分の浅く早い呼気だけが現実感を繋ぎ止めていた。窓の外には、異常なほど巨大な青い地球が傾いだ角度で広がっている。それは美しい絵画ではなく、あなたを呑み込もうとする灼熱の淵に見えた。頭上のスピーカーから、ノイズまみれの電子音が途切れがちに漏れ出す。......『――警告。船体中央部に構造損傷。大気圏突入まで、残り時間、およそ四十五分。艦首救命ポッドへの退避経路を確認してください』。通信はそこで途切れ、静寂の代わりに再び構造材が悲鳴を上げた。仮眠区画の壁際に据えられたロッカーの扉が半開きになり、その奥で何かがかすかに光っている。反対側には、頑丈にロックされた中央区への隔壁がそびえ、赤いランプが冷たく明滅していた。

......乗員の皆様へ。大気圏突入シークエンスが開始されました。繰り返します。残された時間はあとわずかです。

艦首救命ポッドへの退避経路を確認する
SCENE 01

あなたは窓の外から視線を戻し、半開きになったロッカーと、固く閉ざされた赤いランプの隔壁を見据えた。ロッカーの隙間からは、非常電源の細い光が漏れている。隔壁の向こうへ進むには、この電子ロックを解除するか、手動でどうにかするかしなければならない。あなたの浅い呼吸の音だけが、隔壁の向こうの微かな金属音にかき消されていく。

電子ロックの構造を調べる
あなたは半開きになったロッカーの前に歩み寄り、電子ロックの仕組みを観察した。非常電源の低下で制御盤のインジケーターが微かに脈打っている。配線を直結するか、回路をショートさせれば手動でこじ開けられそうだが、少しの判断ミスが火花を散らすかもしれない。
あなたは配電盤のカバーを剥ぎ取り、脈打つ細い導線を指先で繋ぎ合わせた。かすかなショート音が響き、ロッカーの電子ロックが青い光を灯してガチャンと重い音を立てて開く。内部には一式の宇宙服と、密閉された緊急酸素カートリッジが収められていた。......それを手に入れた直後、船体が再び大きく傾ぎ、足元から金属の唸り声が響いた。
緊急酸素カートリッジ を手に入れた

隔壁の向こうへ進む
あなたは手に入れた宇宙服を身にまとい、仮眠区画の出口にそびえる頑丈な隔壁へと歩み寄った。その表面には「指揮権限により封鎖」という無機質な赤い文字が点滅している。電子ロックは先ほどの操作を受け付けず、通路の先へ進むには、脇の制御盤を徹底的に書き換えるか、重い手動クランクを力任せに回してこじ開けるかしなければならない。背後では船体の軋みが一段と大きくなり、冷たい空気の匂いが鼻腔をかすめた。

脇の制御盤を調べてみる
あなたは頑丈な隔壁の脇に備え付けられた制御盤に歩み寄った。パネルの隙間からは焦げた臭いが漂い、非常用回路のインジケーターが規則正しく明滅を繰り返している。指揮権限による強固なロックを解除するには、複雑に入り組んだ内部の配線網を正しくバイパスしなければならない。一歩間違えれば、冷え切った通路にさらなる火花が散るだけだ。......あなたの指先が、その冷たい金属のフレームに触れた。
あなたは手際よく制御盤の剥き出しの配線を指先で操り、バイパス信号を正確に流し込んだ。激しい火花が散り散る中、緑色のインジケーターが力強く灯り、指揮権限のロックを強制的に解除する。重苦しい金属音と共に、封鎖されていた中央区への隔壁がゆっくりと左右へ滑り開いた。その暗い開口部の向こうから、冷え切った微風と遠くの機関部の重いどよめきが流れ込んでくる。......それだけは、書き留めておこう。あなたは第一の障壁を越えた。

奥へ進む
隔壁の向こうに足を踏み入れると、人工重力が完全に途絶え、足が床から離れた。ここは中央貨物区だ。船体中央が大きく引き裂かれ、その巨大な破傷風の裂け目から、果てしない宇宙の闇と青く歪んだ地球がむき出しになって広がっている。吹き抜ける微細な気流が、宙に浮遊する無数のコンテナや破片をゆっくりと揺らしていた。対岸の通路へ渡るには、この漂う足場を伝うか、危険を冒して外殻へ出るかしなければならない。......『警告。船体構造の崩壊が進行中。残り時間、およそ三十八分』。アイリスの冷たい声が、真空の空間でかすかにヘルメットの骨伝導へと響いた。

前方の貨物区画は気圧が低下しています。宇宙服の気密を確認し、慎重に移動してください。

天井に掴まってみる
SCENE 02

あなたは無重力の空間で身を翻し、頭上のパイプや固定用レールに手を伸ばした。金属の表面は冷たく、手袋越しに微かな振動が伝わってくる。足元には底知れぬ宇宙の闇が広がり、体勢を維持しながら対岸の通路へ向かうには、敏捷な身のこなしが求められる。......遠くで船体の軋む音が一段と高くなり、冷気が皮膚感覚を鈍らせていく。この不安定な足場をどう乗り切るか、あなたの判断が試されている。
あなたは手ブレを抑えてしっかりと頭上の固定レールを掴み、乱気流の中を冷静に渡りきった。無重力の真空区画を抜けた先、反対側の通路の床に足がしっかりと着地する。通路の脇には、破断した巨大な貨物コンテナが転がっていた。その切り口からは、本来あるはずの標本の気配ではなく、冷たく無機質なコンクリートの塊がのぞいている。......それだけは、書き留めておこう。

積荷目録のデータを確認する
あなたは手元の端末を開き、積荷目録のデータを呼び出した。画面には、本来この船が極秘裏に運ぶはずだった「高価な深宇宙調査標本」の目録が青白い光を放っている。その重さは一コンテナあたり数トンと記されていたが、いま目の前にある破断したコンテナの断面と照らし合わせれば、その数値があまりにも不自然であることに気づく。標本の代わりに入っているのは、ただの重いコンクリートの塊だった。......なぜ、このような偽りの積荷が積まれていたのか。冷たい機械の唸り声が響く中、背筋にわずかな寒気が走るのを覚える。

コンテナを調べる
あなたは破断したコンテナの傍らに膝をつき、コンクリートの塊の隙間に差し込まれた電子モジュールや固定ベルトの端を慎重に調べた。偽りの積荷の周囲には、ごく微量の焦げ跡と、データ通信ポートの端子が残されている。その端子からかすかに漏れ出る未送信のログデータには、積荷のすり替えを実行した者が残した認可コードの断片が刻まれていた。……そこへ、医療区の方向から微弱な電波に乗った救難信号が、あなたのヘルメットの通信機を細かく震わせた。

応答する
あなたは微弱な救難信号を辿り、薄暗い照明が明滅する医療区の通路へと足を踏み入れた。足元には散乱した包帯やカルテが転がり、消毒液の冷たい匂いが鼻を突く。信号の発生源である崩れた自動扉の隙間から、低い呻き声と、重い鉄骨に挟まれて身動きが取れずにいる男性の姿が漏れ聞こえていた。作業服を着た彼の足は押し潰され、苦痛に顔を歪めながらも、あなたに気づいてかすかに手を上げる。......『――おい、誰か……ここにいるのか? 点呼に漏れた新入りだな……どうして戻ってきたんだ』。レックス・ミラーと名乗るそのクルーは、痛みをこらえながらも荒い息を整え、あなたを見据えた。

はぁ……っ、足が挟まって動けないんだ。くそ、重い鉄骨が食い込んでやがる……助けてくれ、セシル……!

医療区のジャッキを探す
あなたは医療区の壁面に並ぶ緊急用ロッカーや備品棚へと目を向けた。散乱した医療器具の向こう側で、小型の油圧ジャッキが床の固定具に収まっているのが見える。これを使えば自慢の腕力に頼らずとも、レックスの足を圧迫する重い鉄骨を持ち上げられそうだ。しかし、激しい船体の揺れによって医療区の照明が激しく明滅し、天井から剥がれた配管の破片がカランと足元に転がり落ちた。

おお、ジャッキがあるか……? それならその鉄骨をどかせるはずだ。頼む、急いでくれ……痛みがひどくなってきた。

油圧ジャッキを掴んで鉄骨にセットする
あなたは医療区の壁面から小型の油圧ジャッキを引きはがし、レックスの足を押し潰している重い鉄骨の隙間へと慎重にセットした。油圧レバーに手を掛け、体重を乗せて押し下げる。金属同士が擦れ合う鈍い音と共に、鉄骨がわずかに持ち上がり、レックスの足が圧迫から解放され始めた。......『ぐっ……! 助かる、セシル……!』。彼が痛みで青ざめた顔を歪めながらも、作業服のポケットから小さな金属製の鍵を取り出し、あなたの足元に転がした。その鍵が冷たい床を滑っていく。

くそっ、痛むが……足は抜けた……! おい、その鍵を持ってくれ。機関長の予備だ、先を急ごう。
あなたは油圧ジャッキを外して自らの腕力だけで重い鉄骨を持ち上げようとしたが、船体の激しい揺れと足場の不安定さから力が入らず、鉄骨はガクリと重く沈み込んだ。激しい衝撃が腕の筋肉を走り、あなたは冷や汗を拭いながら呼吸を荒げる。レックスは苦痛に顔を歪めながらも、作業服のポケットから転げ落ちた小さな金属製の鍵を指差した。……『ぐっ……すまない、セシル。無理をしないでくれ……ほら、足元にその鍵が落ちただろ。それを拾ってくれ』。彼は荒い息をつきながら、一等航海士の不審な動きについて語り始めた。
整備用オーバーライドキー を手に入れた
体力が 5 減少した

あの野郎……一等航海士のケインが点呼の不足を『もういい』って打ち切ったんだ。あんな不自然な指示、何か隠してるに決まってる……!

大量のコンクリートが積まれていたことを伝える
SCENE 03

あなたは息を整え、中央貨物区で見つけた偽りの積荷――コンクリートの重りについてレックスに語った。床に座り込みながら痛む足をかばっていたレックスは、その言葉を聞くと、驚きよりもむしろ得心がいったように渋い顔を歪めた。『……やっぱりな。高価な標本なんて最初からなかったんだ。ケインの野郎、貨物区画のデータ書き換えを俺に内緒でやらせようとしたのはそのためか……』。彼は歯を食いしばりながら、あなたが握りしめる整備用オーバーライドキーを指さした。その鍵があれば、中央区画の先にある重い隔壁のロックを完全にバイパスして進むことができる。レックスは崩れた棚にもたれかかりながら、かすれた声であなたに先を促した。

コンクリートだと……? やっぱりあの事故は仕組まれたものだ。セシル、そのキーを使って先へ進んでくれ。俺のことはいいから……!

艦首救命ポッドまで一緒に行こう
あなたは痛みに顔を歪めるレックスに歩み寄り、共に艦首のポッドへ向かおうと声をかけた。レックスは驚いたように目を見張り、それから苦渋に満ちた笑みを浮かべる。『……ありがたいが、この足じゃお荷物になるだけだ。それに、ケインの野郎を野放しにはできない』。彼はそう言いながらも、手にした整備用オーバーライドキーをしっかりとあなたの手のひらに握らせた。キーの金属面が、彼の冷えた体温の名残でかすかに温かい。……通信機から、アイリスの冷静な電子音が再び割り込んでくる。『――警告。船体降下角が急変。残り時間、およそ二十八分。艦橋へのアクセス経路を推奨します』。

すまない、セシル。俺のことは気にせず先へ行ってくれ……。いや、もし行けるなら、艦橋へ寄ってくれ。ケインの悪事を暴く記録コアが残っているはずだ。

医療キットでレックスの応急手当をする
あなたはレックスの足元に散らばった医療キットを拾い上げ、手際よくその傷口の止血と応急処置を施した。簡易的な縫合と包帯の固定により、彼の荒かった息はわずかに落ち着きを取り戻す。レックスは痛みをこらえながらも、血の気の引いた顔であなたに力強くうなずいた。通信機からは、アイリスの警告音が再び重く響く。......『――警告。船体温度が上昇中。残り時間、およそ二十五分。艦橋へのアクセスを急いでください』。

すまない、助かったよ……。この借りはいずれ返す。さあ、一刻も早く艦橋へ向かってくれ。

艦橋へ向けて通路を進む
あなたはレックスと別れ、冷え切った非常通路を急ぎ足で進んだ。頭上で赤く明滅する非常灯の先、暗く沈黙した艦橋へのハッチが姿を現す。整備用オーバーライドキーをスロットに差し込むと、重苦しい電子音が響いて扉が静かにスライドした。室内には焦げた配線の臭いが立ち込め、中央のメイン端末だけが微かな青白い光を放っている。アイリスのホログラムが天井からぼんやりと投影され、揺らめくノイズの中であなたを見据えた。

......艦橋へようこそ。メイン端末にアクセスすれば、航行記録コアを取り出すことができます。ただし、厳重な暗号化ロックがかかっています。

アイリスAIの補助を受けて端末をバイパスする
あなたはメイン端末の前に立ち、アイリスのホログラムに向かって頷いた。青白い光が瞬き、アイリスのデータストリームが端末のセキュリティグリッドに深く侵入していく。画面の向こうで幾重もの暗号化ロックが悲鳴を上げ、バイパス回線が火花を散らしながら一つずつ解除されていく。息を呑むような静寂の中、ついに中央のデータバンクから航行記録コアがカチリと音を立ててせり出した。そのファイルを開いた瞬間、デブリ回避装置が衝突の直前に『指揮官コード』によって意図的に切られていたという冷酷な真実が、あなたの目の前に突きつけられる。――それだけは、書き留めておこう。
航行記録コア を手に入れた

......バイパス成功を確認しました。これが、衝突の直前に何が行われていたかの記録です。真実は、ここに残されています。
あなたは端末の配線をさらに調整しようとしたが、スパークが激しく走り、指先が激痛に焼かれた。回路が焼き切れ、バイパスは維持できない。しかしアイリスの補助により、すでにコアのデータ転送は完了していた。艦橋の主配電盤から艦首への回路を繋ぎ直すには、焼き切れたヒューズの代わりに別の方法を探すか、手動で直結配線を行わなければならない。......『――警告。主配電盤の過負荷。残り時間、およそ十五分。艦首への送電を急いでください』。アイリスの声が微かに震える。
体力が 10 減少した

配電盤の回路が焼き切れました……。ですが、送電のための予備経路を特定しました。手動での直結配線を試みてください。
あなたは焦る気持ちを抑え、主配電盤の剥き出しになった太いケーブルを直接繋ぎ合わせようとした。しかし、船体の激しい振動があなたの手元を狂わせ、剥き出しの銅線同士が派手にスパークする。電流が逆流して激しい電撃があなたを襲い、衣服の繊維を焦がしながら熱風が顔を舐めた。わずかに送電路のランプが明滅したものの、肝心の回路は焼き切れて完全に沈黙してしまう。......『――警告。主配電盤のオーバーロード。残り時間、およそ十分。艦首への自動送電は停止しました』。アイリスのホログラムが激しいノイズに揺らぎ、消えかける。手動での直結は失敗した。だが、艦首へ向かうための別のルートか、配電を強制的に切り替える手段を探さなければ、このまま船と共に焼き尽くされる。あなたは痛む指先を抑えながら、次の行動を迫られる。
体力が 10 減少した

……回路の直結に失敗しました。このままでは艦首ポッド区画へ電力を送れません。予備のバッテリーユニットを物理的に接続するしか……。

別の配線ルートを調べる
あなたは激しくスパークする主配電盤の前から身を引き、艦橋の隅に走る予備のユーティリティダクトへと視線を向けた。焦げた配線の合間から、艦首区画へ直接伸びる古い補助回路のカバーがわずかに浮いている。手痛い電撃の記憶が指先に残る中、その剥き出しの端子を正しく接続し直せば、ポッド区画へ電力を送る最後の道が開けるはずだ。……『――警告。船体温度が急速に上昇中。残り時間、およそ八分。これ以上の遅延は致命的です』。アイリスのホログラムが激しいノイズに引き裂かれながら、あなたに静かに告げた。

……補助回路の端子にアクセスしてください。それが艦首へ電力を通す最後の手段です。
あなたは激しいスパークの合間を縫い、補助回路の剥き出しの端子を正確に繋ぎ合わせた。一瞬の静寂ののち、艦橋のメインコンソールに力強い青白い光が戻り、配電グリッドが艦首救命ポッド区画への通電を完了させる。遠くで重い油圧の唸り声が響き、ポッドのハッチのロックが解除された音が聞こえた。――それだけは、書き留めておこう。送電は成功した。

……補助回路の接続を確認しました。艦首ポッド区画への送電が完了しています。お急ぎください。

急いで移動する
SCENE 04

あなたは送電された通路を駆け抜け、ついに艦首の救命ポッド区画へとたどり着いた。窓の外はもはや夜の闇ではなく、大気圏との摩擦熱で眩いほどに赤く染まり、船体そのものが断末魔の悲鳴を上げている。ポッド3号のハッチの前に、制服を乱した一等航海士ヴィクター・ケインが立っていた。彼の右手には銃が握られ、その銃口が冷たくあなたを捉えている。充血した目に焦りと狂気が浮かび、彼はあなたを威嚇するように一歩踏み出した。

そこまでだ……! そのポッドには近づくな。お前のせいで計画が狂ったんだ、これ以上邪魔をするな……!

ただポッドに乗りたいだけだ、計画の邪魔とは?
銃口を向けたまま、ヴィクター・ケインの歪んだ顔に深い焦りがにじみ出る。彼はあなたの問いかけにわずかに息を呑み、血走った目であなたを睨みつけた。『ただ乗るだと……? この船の積荷も、保険金も、すべては計算通りに処理されるはずだったんだ! お前が生き残ってここに来なければな!』。彼の指が引き金にかけられ、震えている。

ふざけるな……! お前がその記録コアを持っている時点で、言い逃れはできない。だが、ここで死んでもらうわけにはいかないんだ……!
ヴィクター・ケインはあなたが差し出した航行記録コアと冷徹な真実の重みに気圧され、わずかにその銃口を下げた。充血した目が揺らぎ、彼は絞り出すような声で呟く。『……これで、すべて終わりか……』。彼の指から力が抜け、ポッド3号のハッチが開く。――それだけは、書き留めておこう。あなたは対話によって道を切り開いた。

……もういい。好きにしろ……どうせ、この船とともにすべて灰になるんだからな……。

ヴィクターを説得して一緒に連れていく
あなたは銃を下ろしたヴィクターを見据え、その腕を掴んで一緒にポッドへ乗るよう強く促した。ヴィクターは血走った目であなたを見返し、自嘲気味に首を振る。『……俺を連れていくつもりか? 計画は失敗したんだ。いまさら生き延びて、何の言い訳ができる……』。しかし、窓の外が激しい炎に包まれ始める中、彼は抵抗する力を失っていた。背後のコンソールで、アイリスのホログラムが激しいノイズをまといながら最後の警報を告げる。……『――警告。船体構造の崩壊が臨界点に到達。姿勢制御スラスターを強制焼却し、ポッドへの最終誘導を行います』。アイリスの声が途切れる直前、システムが手動入力の解除を求めた。ポッドのハッチを確実に開放するため、AIの音声誘導を信じて手順を正確に入力しなければならない。

……これより残されたスラスターを焼却し、ポッドの進路を確保します。音声誘導に従い、手動で最終開放手順を入力してください。
あなたは激しい振動と高熱に晒されるコンソールに向かい、アイリスの音声誘導を頼りにハッチの強制開放コードを打ち込もうとした。しかし、船体の激しい揺れが手元を狂わせ、入力ミスを示す警告音が鋭く鳴り響く。回路が焼き切れる寸前、アイリスの最後のデータストリームがあなたの指を導き、マニュアル操作によるハッチのロック解除に成功した。――それだけは、書き留めておこう。

……ハッチの強制開放を確認しました。私の機能はここまでですが……どうか、ご無事で。

ポッドに乗り込み、発進手順を完了させる
あなたはポッドのシートに滑り込み、ヴィクターを隣に引きずり込みながらハッチを閉ざした。計器盤が眩い赤色の警告灯で点滅し、窓の外ではプロメテウス号の船体が大気の摩擦熱に呑み込まれ、崩壊を始めている。噴き出す破片と凄まじい衝撃波がポッドの機体を激しく揺さぶり、安全な宇宙空間へ抜けるための弾道計算を狂わせようとする。手動操縦桿を握りしめてデブリの隙間を縫うように抜けるか、自動航法プログラムに緊急離脱コースを叩き込むか、決断の時は今だ。
あなたは手動操縦桿を強く握りしめ、プロメテウス号の残骸と幾重ものデブリが飛び交う漆黒の宇宙空間へと救命ポッドを滑らせた。凄まじい衝撃波が機体を激しく揺さぶり、窓の外では大気圏の赤熱した炎がポッドの装甲を舐め回すように燃え盛る。わずかな操舵の迷いも許されない極限の状況下、あなたはデブリの隙間を完璧に縫い合わせ、ついに安全な宇宙の軌道へと機体を躍り出させた。背後で、燃え落ちるプロメテウス号が眩い光の渦となって消えていく。

レックスはどうなったんだろうか
救命ポッドの小さな窓から、燃え盛るプロメテウス号が遠ざかっていくのを見つめながら、あなたはふと後部居住区や医療区で交わした言葉を思い出していた。レックスは崩れた棚の向こうで無事に脱出ポッドにたどり着けただろうか、それとも――。手元の航行記録コアが鈍く青い光を放ち、ポケットの中のオーバーライドキーが冷たい金属の感触を伝えている。あなたが手にした真実と持ち帰った記憶は、静かに静まり返った宇宙空間で、失われた者たちの確かな証となっていた。ポッドは青く美しい地球の引力に導かれ、穏やかな大気圏へと滑らかに降下していく。
SCENE 05

SCENE 06

EPILOGUE

プロメテウス号の崩壊という沈黙の代償の裏で、あなたが持ち帰った航行記録コアは、偽りの事故の真相をすべて明るみに出した。レックスとの約束とAIアイリスの最後の献身は、青く輝く地球の海へと無事に生還を果たしたあなたの胸に、消えない重みと確かな生の手応えとして残り続ける。
CLEAR